elkurin’s blog

銀英伝はいいぞ

WESTSIDE STORY in STAGE AROUNDの感想

今日(8/31)に観てきたウエストサイドストーリーがかなり良くて衝撃的だったので、これは記憶が薄れる前に感想を書かねばと思ったので感想を書きます。観劇してきたのは、「IHIステージアラウンド東京」という豊洲にある360度回転する斬新な劇場で3ヶ月近くにわたり公演されている来日公演です。当たり前ですが言語は英語です、が少しスペイン語も入ります。日本公演なのでちゃんと字幕も入ります。

https://t.pia.jp/pia/events/wss360/

以前Jesus Christ Superstarのすすめという記事を書いたんですが、意外と反響もあったので、シリーズ化してWestside Storyのすすめも書こうかなと思ってます。ので、今回はストーリー解説とかは抜きにしてただ感想を散文的に書きます。

見出しは特に書きたいことについて羅列しているだけなので、型は一致していません。

 

舞台演出について

今回見た劇場は、360度全方面舞台で、場面に応じて客席全体が回転するすごい舞台。だからこそ、小道具の出し入れとかがなきに等しい分舞台装置の作り込みがすごくて、映画並みの舞台背景を見ることができた。それにくるくる回っていく感じによって空間の広さを感じさせられ、また移動するシーンが本当に移動しているからこそ物語に入り込みやすく感じた。他にもいいことがあって、幅の広い舞台だから、1幕の最後ら辺のTonight(Quintet)では、アニータとかトニーがいる建物が別々に存在しながらも同じ舞台に収まっていて、場所の使い方がうめえなあという気持ちにさせられた。360度回転とか聞いた時アトラクションっぽくてチャラチャラしてんなと正直思ったけど、あのシアターはみんな一度見ておいた方がいい。舞台の概念が変わる。

序曲

ジェット団とシャーク団のケンカのシーンから始まる由緒正しい演出。まず序曲のタイミングで、オケが怪しくてあ〜〜〜頑張れ〜〜〜ってちょっと思ってたけど、正直あの序曲クソ難しいしまあ仕方ないと思いつつ、ケンカが始まる。

しかしケンカと言ってもいきなりバチバチの殴り合いをするわけではなくて、路上でジェット団とシャーク団が出会ったら、人数の多い方がイキり人数の少ない方が逃げて仲間を連れてくるの繰り返し。そして浮いた兵を大人数で刈り取るという傭兵学の初歩を実践しようとしたシャーク団のもとに、危機一髪仲間のジェット団が駆けつけて大乱闘スマッシュブラザーズが始まるという話。ウエストサイドテンプレの序曲演出ですね。今回も「戦いは数の多い方が勝つ」という世の真理を改めて確認しました。

この時シャーク団がやりがちの足上げるやつが、突然優雅なバレエで、違和感がすごかった。もっと上げる時は早く、下ろす時はゆっくりというキレのあるダンスが欲しかった。あと、馬跳び?をし合うシーン、ブロードウェイ本場で見たときと違って飛ばれる側がしゃがんでいてジャンプ力の足りなさを感じてしまった。あそこ直立している奴の肩の上を飛んで欲しかった。その2点が気になったけど、全般的にダンスのレベルは高くてすげえ興奮してた。というか観ながらニヤニヤしてた。あー!ウエストサイドが始まった!みたいな気持ちになって、やっぱり序曲は高ぶりますねえ。あと特筆すべきは演出のうまさで、最初に言った通り360度舞台が回転する形式だから、チンピラどもが道を歩いていく様子がうまく演出できていて、場所が移動していく感じがよく読み取れた。他のシーンになるけど、バイクを舞台上で乗り回してぐるぐる回ってたりもして、実際以上の広さを感じた。

 

Mambo!

シャーク団とジェット団の男女全員が揃って舞台に立ってるのはここ!ダンスパーティーのシーン!会場のジムは中立地帯だから決闘は始まらないけど、その代わりにダンスバトルが繰り広げられる名シーン。ここは歌手のはずがめっちゃガチガチに踊らないといけないやばいシーンなんだけど、特にジェット団のトップのリフと彼女がかなり高レベルで、足の伸びは綺麗だしアクロバットもすごいしかっけ〜ふぅ!いけージェット団!って気持ちになってた!

ダンスのパートナーをシャッフルしようって言って回るシーン、リフが真っ先に彼女の手を取りに行っててかっこいいぞ〜〜って心の中で叫んでた。けどあのシーン、指揮がかなり急いてて、もう少しタメを作ってもいいんじゃないかなあと思ってしまった。いやあでもバーンスタインって天才だね〜。いや本当に曲の展開とか聞いててなんでこんなにワクワクするんだろうって感じ。あんな作曲家になりたいね。

AmericaやCoolのダンスシーンも期待以上で、歌って踊れる俳優みたいなチートが大量発生していた。

 

歌手について

さて、とんでもなく難しいことで有名なウエストサイドストーリーだが、今回の歌い手陣はどうだったかというと。

まずトニー。Something's comming, Maria, Tonightと、難曲ぞろいの鬼畜な役。トップスターでもろくに歌いこなせないような曲が並んでいたが、なんと音程完璧。ちょっとビブラート激しすぎかなと思うシーンもあったけど全般的には声質も重厚で最高。ただ弱音が苦手っぽくて、Something's commingの最後とか弱音で長く出さないといけないあたりがデカくなりがちかなあと感じた。でも期待以上。

次にマリア。こちらもTonightの冒頭部分という難パートを抱えているが、残念ながらここの音程はかなりマズくて、Tonight聞いてる時はあ〜〜トニーがせっかくうまいのに〜〜と思わざるを得なかった。しかしその評価は2幕で修正。確かに中低音の難しいパートの音程が怪しかったが、高音は圧巻。I feel prettyの最後にブロードウェイ版と同じく超高音を出して周りのガールズを圧倒するおふざけシーンがあるんですが、オペラ歌手顔負け(まあマイクあるんだけどね)の迫力だし、出した瞬間からビシッと音程が決まってるし、拍手せざるを得なかった。他のシーンでも、高音はすごく美しく伸びていて、一番最後に倒れるトニーに歌い掛けるシーンは、あんな体勢だし準備もないのにいきなり小さくも芯のしっかりした高音が美しく響き渡り、文字通り時が止まったようなシーンに完成していた。

まあ他はいいかな。歌手として突出していたのはやはりトニー。アニータは俳優としてすごく評価が高い。

リフの役作りについて

ところで、今回のリフにかなり興味を抱いたので。

ジェット団のボスであるリフ。兄貴分のトニーをめちゃくちゃ信頼していて、トニーがジェット団から抜けて他のメンバーが抜けたやつなんて知らんみたいな雰囲気になっても頼っており、ボスにしては女々しいやつみたいな雰囲気があったリフ。しかし、今回の役作りは私に新しい解釈を与えたので書いていく。

リフは叔父の元で暮らすのが嫌すぎて飛び出してきて、トニーが住むドクの店に居候している設定だが、こいつ実はいい子なんじゃね?説が浮上した。まず、かなり英語が綺麗で野蛮な喋り方じゃないし発音も砕けてない、リスニングかみたいな明快な発音でちゃんとした出自を感じさせる。ちなみに彼のアメリカ英語が大好きなので、アメリカ英語推しに乗り換えます。

そして、性格。Coolの曲ではすぐに挑発に乗ってピーピー喚く仲間をなだめ諌める様子が書かれるが、今まで見ていた演出ではカッコよく決めようぜみたいなノリで特に深い考えがあるわけじゃなかったように感じていた。しかし今日のCoolは本気で仲間の身を案じ、リーダーとして導いているなあという風に見えた。確かに喧嘩シーンでも、威圧してシャーク団を追い返すことはあっても、敵を嘲笑ったりバカにしている反応は見つからなかった(見落としていただけかもしれない)。決闘しようにも必ず握手しようとこだわるし、1幕の最後の決闘のシーンでも、ベルナルドはナイフで手遊びしてイキったり仲間の近くに固まってヘラヘラしている一方、リフはいたって真面目で調子に乗ることもないし、むしろ仲間のジェット団がいない方向に位置どりして巻き込まないようにしている(トニーから遠ざかる意味合いもあったと思うけど)ように感じた。リフがキレるタイミングはいつもトニーに暴行を振るわれたタイミングであり、以上のことを鑑みると、ただの仲間思いのいい子だけど仲間になったのがたまたまチンピラだったからチンピラのボスになったやつじゃないか?という結論に至った。

もともとジェット団推しで、今日もブロードウェイで入手したジェット団Tシャツを着ていった身としては、このリフは推さざるを得ないし、もう一度見にいって新たな発見を探しに行きたいと思う。

 

これくらいかなあ。